和紙を探しているときに、価格差に気付き「一体なにが違うんだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。身近なお店で手に入るものから、専門店で扱うものまで、同じ「和紙」という名前がついていても価格はさまざまです。
今回は、そんな価格差が生まれる要因や具体的な違いをお伝えしつつ、「高いから良い、安いから悪いわけではない」という理由について、和紙専門店である弊社が解説します。

高い和紙と安い和紙の決定的な違い
何十枚も入って100円のものから、1枚で数千円するものまで、同じ和紙でも価格には大きな開きがあります。この価格差は、主に和紙の「表情」や「強度」、そして「年月を経ても美しさを保てるか」といった違いとして現れます。
強度の違いについては、本物の和紙で耐久性を検証した記事「【金魚すくい】和紙で最強のポイを作れるか!?本物の和紙で耐久性を徹底検証してみた」で解説していますので、ここではぱっと見て分かる表情の違いとして、光に透かしたときの様子をご紹介します。
光に透かしてわかる表情の違い

漂白された原料を使用しているため真っ白で、繊維の絡みも少ない
安価な和紙は洋紙と同じ「パルプ」を主原料としているため、繊維の動きが均一な印象です。一方で高い和紙は、繊維の動きに規則性がなく、モヤモヤとした美しい風合いがあります。
安価な和紙の中にも、パルプ100%のものから、表情を出す為に楮を少量混ぜて漉かれたものもあります。

無漂白の原料を使用しているため楮本来の色合いで、繊維の絡みも美しい
この違いが生まれる理由
なぜ、透かした時の表情にこれほどの違いが生じるのでしょうか。その最大の理由は、使われている「素材」にあります。
安価な和紙の多くは、洋紙と同じ「パルプ」を主原料としています。パルプとは、木材などの植物を細かく砕いて取り出した繊維のことです。靭皮繊維と比べて繊維が短いため、和紙特有の素材感には欠けます。一方で、原料価格が安く、機械での大量生産も可能であるため、安価な紙を作るのに適しています。

一方、伝統的な和紙は、「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」「雁皮(がんぴ)」といった植物の「靭皮(じんぴ)繊維」を主原料としています。靭皮とは、植物の硬い外皮をむいたすぐ下にある、内側の柔らかい皮(甘皮)のことです。その繊維は、洋紙の主原料であるパルプと比べると長く強靭で、複雑に絡み合うことで、薄くても破れにくく丈夫な紙になります。

こちらは漂白された原料のため白いですが、本来は生成り色です
また、和紙原料か洋紙原料かという素材の違いだけでなく、「和紙原料の産地」や、和紙として漉けるようにするための「原料の処理方法」も、価格に大きな差を生む要因となります。
安価な和紙は、コストを抑えるために化学薬品を使って原料処理をおこなっています。薬品を使えば、手作業による不純物(チリなど)の除去工程を省き、短時間で真っ白で綺麗な紙に仕上げることができます。しかし、繊維が傷むため、紙の寿命は短くなります。
一方、化学薬品に頼らず手作業で不純物を除いた「和紙原料100%」の和紙は、繊維が傷まないため何百年もの経年変化に耐えうる強靭な紙になります。こうした原料処理にかかる手間の違いが、和紙の価格と寿命に直結しているのです。

手頃な価格で、日常使いしやすいのが特徴です
本文では構造の違いをわかりやすく比較するため、和紙原料とパルプを分けて解説しましたが、現在流通している和紙には、パルプ100%で作られたものや、これら異なる素材を混ぜ合わせる「混抄(こんしょう)」という製法で作られたものが数多く存在します。当然ながら、パルプの比率を高めれば高めるほど価格は安く抑えられます。しかしその反面、和紙本来の強靭さや独特の風合いといった「和紙としての個性」は失われていきます。

それぞれの和紙の役割
安価なパルプ製和紙の魅力
では、パルプを主原料とした手頃な和紙は良くないものなのでしょうか。いいえ、決してそうではありません。一番の魅力として、安くて手軽に扱えることがあげられます。色や表情のバリエーションも豊富で、失敗を恐れず工作やラッピング、日々の暮らしの中で気兼ねなく楽しむことができます。

さらに、本来の和紙原料のような強靭さがなく「破れやすい」という性質も、場面によっては大きな長所になります。その良い例が、先ほど強度の違いで触れた「金魚すくい用のポイ」です。
一般的なポイ(実はパルプ製)を、和紙原料100%のものに差し替えて試してみたところ、思っていた以上に破れにくく、これでは金魚すくいの緊張感が味わえません。つまり、ポイのように「容易に破れること」が求められる場面では、和紙のような強い繊維よりも、むしろ繊維が短く手頃な紙の方が最適なのです。

繊維が短いことが分かります

高い和紙が求められる場面とは
一方で、長く残したい大切な作品などには、経年変化に耐えうる品質が求められます。そうした場面では、楮、三椏、雁皮といった和紙原料が100%使われていることはもちろん、「国産原料か」「適切な処理が行われているか」といった、一見しては分からない部分に対する長期的な信頼性が非常に重要になります。

最後に
和紙専門店の私たちが日頃「非常にもったいない」と感じていることがあります。
それは、本来の和紙に触れる機会が少ない現代において、身近にある安価な和紙だけを見て「和紙とはこういうものだ」と思い込まれてしまうこと。そして逆に、「伝統的な製法で作られたものでなければダメだ」とこだわりすぎるあまり、安価な和紙の良さや手軽さを否定してしまうことです。

それぞれの個性を知ることで、和紙選びがもっと楽しくなります
もし、これまで値段や手軽さだけで選んでいたのなら、機会を見つけて本来の和紙に触れてみたり、光に透かして繊維の動きを見るだけでも、確かな違いを感じていただけるはずです。逆に、今まで使ったことのない原料の和紙を試してみるのも、新しい発見があって面白いかもしれません。
安い和紙と高い和紙、それぞれの違いを知ることで、これからの和紙選びの視野はさらに広がります。この記事が、価格や「和紙はこうあるべき」という固定観念に縛られず、もっと自由に和紙を楽しむための小さな「きっかけ」となれば幸いです。

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