柔らかく優しい光が部屋を包み込む、和紙を使った天井照明カバー。初心者の方はもちろん、お子さんと一緒に楽しみながら作ることもでき、お部屋の雰囲気をガラッと変えてくれます。今回は、和紙を使った照明カバーのリメイク方法を、和紙専門店の弊社が写真付きで詳しく説明していきます。
照明器具を買い替えようと思うと、費用的な面で難しいことがあります。しかし今回の方法を使えば、今ある照明カバーを活用して、原状復帰も可能なオリジナル照明カバーを作ることができます。ぜひ照明から、素敵なインテリア作りを楽しんでみてください。今回は半円型のカバーを使いますが、その他の形のものでも出来ます。
準備するもの
- 麻落水紙(あさらくすいし)とは:今回使用する麻落水紙は、麻の繊維を漉き込んだ和紙。落水とは文字通り、漉きたての濡れた状態の和紙に、水滴を落として模様を付けたものです。まるでレースのような繊細な模様が特徴で、光に透かすと美しく、照明や間仕切りなどのインテリアとしてよく用いられます。また、ラッピングやコラージュ、アート作品の制作などにも人気があります。
作り方
Step1:シェードを取り外して清掃する
照明器具のシェード(シーリングライトカバー)を取り外し、内側と外側の汚れを拭き取ります。
水洗いする場合は、水滴が残らないように完全に拭き取ってください。
Step2:和紙をカットする
シェードの直径に10cmほど余裕を持たせて和紙をカットします。揉み加工後にサイズが縮むため、余裕を持たせておくことがポイントです。今回はシェードの直径が56cmなので、和紙は66cm角にカットしました。実際、揉み加工後、66cm角の和紙は62cmほどになりました。
使用する和紙や伸ばし方によって収縮量は変わりますが、サイズに余裕を持たせておくことで、サイズが足りなくなる心配がなくなります。また、途中でアレンジを加えたいときにも容易に出来るようになります。
Step3:和紙を揉んで広げる
和紙を2~3回ほど揉んで広げます。揉む理由としては、シェードの曲面に追従させるためです。揉むことで細かいシワが全体に分散され、曲面に出来るシワが目立たなくなります。
揉み加減によって仕上がりも変わるので、お好みで調整してください。粗めに揉むと凹凸感が出て、細かく揉むとスッキリとした見え方になります。
Step4:シェードに和紙を載せる
和紙の裏表は特に気にされなくてもよいですが、つるつるしている面が表、ざらざらした面が裏です。直感的に「良い」と感じられる面を表面にしてください。
和紙をシェードに載せる際は、上下左右の間隔が均一になるように配置します。また、シェードの巻き込み部分に、和紙が十分足りているか確認してください。余裕を持ったサイズでカットしていますが、もし足りない場合は、手で伸ばして広げてから再度配置してみてください。
Step5:糊を刷毛で塗って手で押さえる
今回使用した障子糊の場合、糊1:水2の割合で薄めたものを使用します。
糊の塗り方は、和紙によって異なりますので注意が必要です。
- 今回使用している「麻和紙」の場合
優しくなでるように糊をぬっていきます。麻和紙でも、厚みが異なると方法が変わるので、心配な方は下記の「その他の和紙の場合」でおこなってください。 - その他の和紙の場合
毛先で優しくトントンとたたきながら、糊を浸透させてください。均一なシワ感で貼りたい場合は、決して撫でるように塗らないでください。誤って撫でると和紙のシワが寄ってしまいます。
どちらの場合も、基本的には和紙が糊で濡れて色が変わるまでしっかりと糊を塗ります。ただし、和紙の凹凸感を残したい場合は、濡れてない部分があっても問題ありません。
片方の手で和紙を支えながら、もう片方の手で頂点から下に向かって糊を塗りましょう。和紙を支える手の位置は、適宜調整しながら進めてください。
麻和紙以外の和紙は、糊が浸透しにくいものがあります。その場合は、糊が浸透するまで様子を見てください。それでも難しい場合は、テーブルに和紙を置き換えて糊を塗り、糊を塗った面をシェードにかぶせて貼り付けてください。※ただし、シワの均一性は損なわれます。
塗り終わったら手で押さえて確認する
塗り終わったら、手のひらや指先で押さえて以下の点を確認します。
- 塗り残しや糊だまりがないか
- 空気やシワがないか
必要に応じて修正しますが、和紙を持ち上げないように注意してください。持ち上げるとシワの均一性が損なわれるため、上から押さえるように修正します。
Step6:巻き込み部分の仕上げ
本体のチェックが終わったら、巻き込み部分の仕上げに取り掛かります。
余分な和紙をカットする
シェードの「フチの厚み」や「巻き込み部分」に合わせて、余分な和紙をハサミでカットします。今回約2cm程残してカットしましたが、多すぎると取り付け時に干渉し、少なすぎると横から見た時に継ぎ目が目立ちます。
多すぎず、少なすぎず、適切な幅を残してカットしてください。シェードの形状により、必要量は変わりますので、確認しながら進めてください。
もし切りすぎてしまった場合は、和紙をテープ状にカットして継ぎはぎしましょう。
綺麗に仕上げれば、継ぎ目もワンポイントになります。
和紙に糊を付けて巻き込む
カットが終わったら、糊を含ませて巻き込んでいきます。
下記写真のように、立たせながら行うとやりやすいです。作業を始めたら刷毛を使わず、手に糊を付けながら行うとよりスムーズに作業ができます。
手に糊をつけるときは、4本の指にまんべんなく糊をつけます。
巻き込むときは、指の腹も使って、手のひら全体でしっかりと巻き込んでいきます。
Step7:乾燥させる
風通しの良い日陰で、完全に乾くまでしっかりと乾燥させてください。乾燥時間は、自然乾燥の場合約1日、扇風機の風を当てて乾かす場合、天候等の条件にもよりますが、約3時間程度です。
同タイプのシェードは、立ち上がり部分があるので、そのまま置いて乾かすことができます。
直射日光やドライヤーなどによる乾燥は避け、日陰で乾燥させてください。
完成!幻想的な光を放つ和紙の照明カバー
和紙を使った照明カバーが完成しました! 照明を点灯すると、和紙の繊細な模様が、まるで月のような幻想的な光に包まれて浮かび上がります。今回使用した麻和紙以外にも、使用する和紙やアレンジによって、様々な表情を楽しむことができます。
見た目だけでなく、もう1点嬉しいポイントがあります。それは、和紙の持つ光の拡散作用によって「照明の光が柔らかく、優しいものになる」ことです。強い光が苦手な方にも、和紙で一枚カバーするだけで、過ごしやすい住環境を作ることができます。ぜひ体験していただきたいです。
でんぷん糊で模様替えも簡単
接着に使用している「でんぷん糊」は、水分を与えることで和紙を簡単に剥がすことができるので、照明カバーを傷つけることなく模様替えが可能です。一般的なシーリングライトであれば、カバー単体でも販売されており、アレンジ用に購入しておくのもおすすめです。
接着にボンドの使用は避けてください。ボンドを使用すると、和紙本来の風合いが損なわれるだけでなく、現状復帰が困難になったり、照明の熱による変形・変色を招いたりする可能性があります。
シワが目立たない理由
今回使用した麻の繊維が入った和紙は、太い麻繊維が重なり合っている素材感のある和紙です。揉み加工によって、貼った後の和紙は実際にはシワが出来ているにもかかわらず、元々繊維が重なり合っている和紙なので、シワが目立ちにくいのです。ただし、曲面が非常にきつい場合は、重なりが多くなり、シワが目立つ可能性があります。
楮などの和紙は、麻和紙に比べて貼り付け時のシワが目立ちやすい傾向があります。しかし、均一に揉みシワ加工することで、曲面にできるシワが全体に分散され、平坦に貼るよりも目立ちにくくなります。楮は麻和紙では表現できない柔らかい風合いと繊細な表情が出せるので、あえてシワを活かしたアレンジも楽しめます。もし、出来る限りシワを目立たせずに貼りたい場合は、雲竜紙(うんりゅうし)という和紙がおすすめです。長めの繊維を漉き込んである和紙なので、シワが同化して目立ちにくくなります。
応用編:紙糸で個性をプラス
今回の作り方に紙糸を追加すると、さらに個性的な照明カバーを作ることができます。
手順
- Step6にある「和紙に糊を付けて巻き込む」の工程を完了します。
- 同じ濃度の糊(糊1:水2)に、必要な量の紙糸を浸しておきます。
- 糊が染み込んだ紙糸を、ランダムにシェードにのせていきます。
- 糸の浮きが気になるところは、手もしくは刷毛で叩くように整えます。
- 乾燥後、シェードの外側に飛び出ている糸は、糊をつけて巻き込んで処理するか、フチの見切り部分でカットします。
4番目の工程でできる紙糸の浮きは、多少あっても問題ありません。むしろ、浮きがある方が凹凸感が生まれ、独特な仕上がりになります。
重要なポイントは「紙糸の配置」です。乾く前に、気になる部分の位置を調整しておきましょう。
最後に
今回ご紹介した方法は、和紙を使った照明カバー作りのほんの一例です。本記事をきっかけに、皆様それぞれの個性でオリジナルの照明カバー作りを楽しんでいただけたら幸いです。たとえ失敗しても、やり直せる方法ですので、失敗を恐れずにチャレンジしてみてください。
和紙の温もりあふれる照明カバーで、心安らぐ空間を演出しましょう。
和紙のある暮らしが、皆様の毎日を彩りますように。
コメント
コメント一覧 (2件)
お邪魔いたします。
ため息が出るくらい、とても美しい照明カバーですね。
通電すると模様がクッキリ。
通電していない時も天井の色と一体化しています。
こんな和紙の使い方があるんだとは、想像しませんでした。
ここからは私の独り言だと思って読んで下さい。
自宅の障子に旦那が植物の葉(シンピジューム)を当てて、よく穴を開けてしまうのですが、100均の穴あき隠しのシールを貼ってますが、可愛くないんです。
和紙の余った部分で、ちぎり絵風に繊維が出る感じに穴あきを隠したらと思います。
ほのかな淡い色合いで、外からの光で浮き上がる様に見えたら素敵だなぁと思うのです。
和紙って、使い方を選びませんよね。
やよいさま、ご覧頂きありがとうございます。
和紙と光は相性がとてもよいので、自然光でも照明でもその良さが活かせます。
曲面に和紙を貼るとき、シワなく綺麗に貼ろうと考えてしまいがちですが、今回の方法は貼り加工で出来るシワを均一化して、デザインの一部にしてしまおうという考え方です。
出来るシワをコントロールして、アレンジを加えることもできます。
とっても参考になるお話ありがとうございます。
綺麗にカットされたものよりも、繊維を出すようにちぎったものの方が表情が出るので、良いアイデアだと思います。
淡い色合いと言えば、4月に掲載した手染め端紙セットが浮かびました。障子の穴補修について、私も改めて色々と試してみます!