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石川県金沢市にある和紙専門店「紙あさくら」の公式ブログです。暮らしを彩る様々な和紙インテリアや制作事例などを発信しています。

【和紙専門店が解説】楮・三椏・雁皮の違いと、もう迷わない和紙の選び方

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「ショップカードに、もう少し高級感が欲しい」「手作りのアクセサリーに、繊細な風合いを出したい」。そんな時、候補にあがる「和紙」。でも、いざ選ぼうとすると「楮」「三椏」「雁皮」といった言葉は目にしたことがあっても、その違いとなると、よく分からない…。

それもそのはず。和紙は原料の組み合わせで、無数の種類が存在するからです。

この記事では、基本となる和紙の「原料」にスポットを当て、それぞれの違いを様々な角度から比較・検証していきます。単に特徴を並べるのではなく、それぞれの紙の「表情」を写真で見比べ、破った時の繊維の出方やインクジェットプリンターの印刷結果などをご紹介します。

この記事を読めば、それぞれの和紙の特性が分かるだけでなく、今後の和紙選びの基準となる「ものさし」が手に入ります。それによって、皆さんの創りたいイメージにぴったりの一枚が見つけやすくなります。

3種類の和紙(楮、三椏、雁皮)を重ねて、それぞれの質感や色合いの違いを示している写真。
今回の比較に使う楮・三椏・雁皮の和紙
目次

和紙の個性を決める、三大原料とは?

和紙の代表的な原料である「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」「雁皮(がんぴ)」。まずは、この3種類が持つそれぞれの個性や特徴、和紙専門店としての視点、そして各素材が最も活きる使い方をご紹介します。

力強さとぬくもりの「楮(こうぞ)」

和紙づくりを支える最も基本的な原料、それが楮です。数ある和紙の原料の中で最も生産量が多く、供給が安定しているため、多種多様な楮紙が市場に出回っています。そして、その長くしなやかで強靭な繊維は、書物や絵画の基底材(絵が描かれる物質のこと)、建築内装材などとして、古くから日本の暮らしを支えてきました。

黒い背景の上で、優雅な曲線を描く楮和紙。その滑らかさと上品な光沢がわかる一枚。
楮(こうぞ)紙

繊維がもたらす「個性」と「表情」

楮の魅力は、なんといっても繊維の力強さにあります。太く長い繊維が複雑に絡み合って生まれる楮紙は非常に丈夫で、その強靭さは以前のブログ記事「【金魚すくい】和紙で最強のポイを作れるか!?本物の和紙で耐久性を徹底検証してみた」の検証実験でも証明できました。楮紙の表面に目を凝らすと、繊維そのものの動きが豊かな表情を生み出しているのが分かります。手触りは、繊維の存在が感じられ、素朴ながらも頼もしい印象です。

極薄の楮紙「土佐典具帖紙 3g」を光に透かしている様子。紙の薄さと、繊細な繊維の質感がわかる。
 世界的な文化財の修復にも用いられる「土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)」。
楮の長く強靭な繊維が、この薄さを可能にしています。

【和紙専門店からの視点】

私たちが楮紙に触れるたびに感じるのは、その圧倒的な「包容力」です。力強い墨の線も、繊細な染色や、ちぎり貼りも、楮の懐の深い繊維がすべて優しく受け止めてくれます。だからこそ「どんな表現をしたいか、まだ迷っている」というお客様には、まず楮紙をおすすめすることが多いのです。作り手の想いをしっかりと受け止め、期待以上の表情を見せてくれます。

  • 水を使う加工での注意点
    糊貼りなど水分を含ませる加工では、水素結合が弱まるため、乾いている時よりも破れやすくなります。水に濡れた状態では「粘り」はあるものの破れやすく、アートパネル作りなどの加工難易度は若干高めです。また、濡れている状態で表面をこすると毛羽立ちやすく、表面がうっすらと乾き始めるタイミングでは、特に注意が必要です。
  • 表情を活かす使い方
    もともと楮紙は、繊維の動きはありつつも、全体としてはすっきりとした表情をしています。そのため、プライスカードのように小さく使うと、その繊細な魅力が伝わりにくいこともあります。そんな時は、あえて荒々しい手漉きのものや、樹皮などを漉き込んだ「チリ入り」を選んでみてください。紙自体の個性が強いため、小さな面積でもその存在感をしっかりと発揮し、豊かな表情を生んでくれます。
黒い背景の上で、緩やかにカーブするチリ入りの楮紙。樹皮の破片が漉き込まれた、素朴な表情が特徴。
樹皮などを漉き込んだ「チリ入り楮紙」
チリの密度や大きさなど、様々なものがあります。

緻密さと気品ある光沢の「三椏(みつまた)」

日本紙幣の原料としても知られる三椏。その名は、枝が三つに分かれて伸びる特徴的な姿に由来します。実は、三椏の樹皮には天然の防虫成分が含まれているため、害虫や動物に食べられることがありません。この優れた性質のおかげで、三椏和紙も虫食いの被害に遭いにくいという特長を持っています。

黒い背景の上で、滑らかな曲線を描く三椏和紙。光を柔らかく反射し、上品な艶を見せている。
三椏(みつまた)紙

繊維がもたらす「個性」と「表情」

三椏の魅力は、繊維の「緻密さ」にあります。楮に比べて繊維が細く短いため、非常にきめ細やかで、表面が滑らかな紙に仕上がります。その優れた印刷適性と紙質は、日本紙幣(日本銀行券)のほか、仕上がった金箔を保存するための和紙「箔合紙(はくあいし)」の原料となることからもうかがえます。

箔合紙の原紙を手に持っている写真。簾の目が見えます。
箔合紙の原紙。うっすらと簀(す)の目がみえる。

【和紙専門店からの視点】

私たちが三椏紙に感じているのは「自らは主張しないのに、作品や商品をより格調高く見せる」という、知的な気品です。それは、すべてを受け止める「包容力」の楮紙とはまた違う、三椏ならではの価値。その「独特の色合い」と「滑らかな質感」が、そこから生まれるものの魅力を静かに、そして最大限に引き出してくれます。

  • 水を使う加工での注意点
    糊貼りなど水分を含ませる加工では、他の原料同様に水素結合が弱まるため、乾いている時よりも破れやすくなります。三椏和紙は、楮に比べて水に濡れた状態での強度が弱いため、アートパネル作りなどの加工難易度は高めです。また、楮と同様に濡れている状態で表面をこすると毛羽立ちやすいので、表面がうっすらと乾き始めるタイミングでは、特に注意が必要です。
  • 表情を活かす使い方
    三椏和紙は、わずかに赤みを帯びた黄味がかった独特な色合いをしています。表面は楮よりも優しい光沢があり、滑らかな印象です。おすすめは、素材の色そのものを活かした使い方。その滑らかさは、万年筆や細いペンでの筆記に最適です。インクが滲まず、シャープな線を描くことができます。また、写真や細密なイラストの印刷など、高い精度が求められる加工で、その真価を発揮します。フォーマルな招待状や、大切な方への手紙など「特別な一枚」として使うのに、これほどふさわしい和紙はありません。
三椏を原料とした、手漉きの仮名書用半紙。
三椏の手漉き仮名書用半紙。
原料となる三椏は、岡山県が日本一の生産量を誇ります。

“和紙の王様”と称される、優美な「雁皮(がんぴ)」

滑らかで光沢があり、そして非常に強い。その引き締まった紙質と耐久性の高さから“和紙の王様”と称されるのが、雁皮です。楮や三椏に比べて発育が遅く栽培も非常に難しいため、生産量も限られており、大変貴重な原料として知られています。その優れた特性から、金銀箔を打ちのばす箔打紙(はくうちがみ)や、襖の下貼り用の間似合紙(まにあいし)といった、特殊な用途で重用されてきました。

雁皮紙の角を優しく手でつまんでいる様子。紙の表面には光が帯状に伸び、その極めて平滑な紙肌と上品な光沢感が伝わる一枚。
雁皮(がんぴ)紙。その極めて滑らかな紙肌は、光を帯状に反射するほど、上品な艶を放ちます。

繊維がもたらす「個性」と「表情」

雁皮の繊維は、楮や三椏に比べて最も細く短く、美しい光沢感があります。この繊維から生まれる雁皮紙は、表面が驚くほど滑らかで、透明感のある美しい紙肌を持ちます。加えて、非常に高い耐久性・保存性を誇るのも、大きな特徴です。

【和紙専門店からの視点】

私たちが雁皮紙から感じるのは、楮の「包容力」や、三椏の「気品」とは異なる美しさです。一見すると、表面は極めて平滑で、個性がないようにさえ感じられます。しかし、その静かな紙肌に触れた時、すっと手に馴染むような素材本来の温かさと、原料のポテンシャルがこれほどまでに純粋な形で現れていることに、感動を覚えるのです。だからこそ、使いこなした時に生まれる作品は、他の紙では到達できない、圧倒的な気高さと美しさを放ちます。

  • 水を使う加工での注意点
    糊貼りなど水分を含ませる加工では、他の原料同様に水素結合が弱まるため、乾いている時よりも破れやすくなります。とりわけ雁皮紙は、水に濡れた状態での強度が他の和紙に比べて非常に弱いという特性があります。アートパネル作りなどの加工難易度はかなり高く、作業には繊細な手技が求められます。その一方で、楮紙などで見られる表面の毛羽立ちは起こりにくい、という長所もあります。
  • 表情を活かす使い方
    雁皮紙が持つ、人の肌にすっと馴染むような滑らかな紙肌と、絹のような光沢。その魅力を最大限に活かすなら「日常的に人が触れるもの」に使うのがおすすめです。例えば、手帳の表紙や財布、名刺入れ、金封など。直接その肌で触れるたびに、他の紙では決して味わえない、雁皮ならではの特別な心地よさを感じていただけます。
雁皮紙の表面の接写。滑らかで艶のある表面と、細かな凹凸の表情が見える。
雁皮(がんぴ)紙の表面は、滑らかで光沢感があります。

【徹底比較】写真で見る、和紙原料による違い

さて、ここからはご紹介した楮・三椏・雁皮、3種類の紙の比較検証です。今回の比較では、すべて国産原料100%、無漂白の「手漉き和紙」を用意しました。

ただし、漉き上がった和紙の乾燥方法が異なり、今回の楮紙は「鉄板乾燥」、三椏紙と雁皮紙は「板干し」で仕上げています。そのため、三椏紙と雁皮紙の表面には、干し板の木目がうっすと転写されているのが見て取れます。(※乾燥方法の詳細は、弊社のウェブサイト「和紙のQ&A:手漉き和紙の乾燥方法「板干し・鉄板乾燥」仕上がりの違いとは?」でもご紹介しています。)

表面の表情の比較

ここでは、3種類の紙の「顔」とも言える、表面の表情を比較します。

左から楮、三椏、雁皮の和紙を並べて、質感と色合いを比較している写真。
左から楮紙、三椏紙、雁皮紙。
それぞれの紙肌が、異なる光沢を放っているのが見て取れます。
  • 楮(こうぞ)
    写真からも繊維の動きがはっきりと見て取れ、和紙らしい温かみのある表情です。
  • 三椏(みつまた)
    楮紙に比べると、よりきめが細かく、滑らかな紙肌を持ちます。また、楮紙にはない、わずかに赤みを帯びた黄味がかった色合いも特徴の一つです。
  • 雁皮(がんぴ)
    他の二つとは、受ける印象が大きく異なります。手に持ってしならせると「ぱりぱり」と音がするほどの強い張りがあり、表面は極めて平滑(へいかつ)。斜めから光を当てれば、上品な光沢と艶が確認できます。
左から楮、三椏、雁皮の和紙を重ね、それぞれの自然な色味や繊維の表情の違いを接写で写した写真。
左から楮紙、三椏紙、雁皮紙を接写で比較。
繊維の様子や紙肌の質感の違いがよく分かります。

光に透かした表情の比較

次に、光に透かしたときの表情を比較してみましょう。

左から楮、三椏、雁皮の和紙を、白いカーテン越しの光に透かしている様子。それぞれの繊維の動きや透過度の違いがわかる。
左から楮紙、三椏、雁皮

どの和紙も、繊維の重なりが生み出す自然な風合いが感じられ、とても美しいです。
楮と三椏は、太い繊維が渦を巻くように動きのある表情を見せてくれます。一方で雁皮は、そのような大きな動きは少ないものの、まるで薄い雲のような繊細な表情が見て取れます。

楮の和紙を白いカーテン越しの光に透かしている様子。繊維の動きや、光の透過具合がわかる。
楮紙
三椏の和紙を白いカーテン越しの光に透かしている様子。繊維の動きや、光の透過具合がわかる。
三椏紙
雁皮の和紙を白いカーテン越しの光に透かしている様子。繊維の動きや、光の透過具合がわかる。
雁皮紙

破ってみた繊維の比較

和紙を破ることで、その個性の一端を垣間見ることができます。今回は、和紙の縁に繊維を出す「水切り」という技法で、それぞれの繊維の様子を比較しました。(※水切りについては、弊社ブログ記事「誰でも簡単に出来る!フチ取りを耳付和紙のように仕上げるカット方法」でもご紹介しています)

黒い背景の上に、水切りをした3種類の和紙(左から楮、三椏、雁皮)を並べ、繊維の出方を比較している写真。
左から楮紙、三椏紙、雁皮紙

まず、写真からも分かるように、楮の繊維が圧倒的に長く、力強いことが見て取れます。
三椏と雁皮の繊維の出方は、一見すると似ていますが、よく見ると明確な違いがあります。雁皮の方が、より繊維が密に出ており、そして繊維そのものに艶があります。この繊維一本一本が持つ光沢こそが、あの雁皮紙独特の、絹のような艶を生み出しているのです。

参考までに、各種原料繊維の平均の長さは以下の通りです。

  • 楮(こうぞ): 7.3mm
  • 三椏(みつまた): 3.2mm
  • 雁皮(がんぴ): 5.0mm

繊維の長さは原料の状態によっても変わるため、これらはあくまで目安です。ただ、こうした数値を参考に写真をご覧いただくと、それぞれの繊維のスケール感がより掴みやすくなります。(※弊社ブログ記事「和紙と洋紙の違いとは?原料・歴史・定義から見る決定的な差 」では、和紙と洋紙繊維の長さの比較をご覧いただけます。)

黒い背景の上に、水切りをした3種類の和紙(左から楮、三椏、雁皮)を並べ、繊維の出方を比較している接写写真。
左から楮紙、三椏紙、雁皮紙
より近くで撮影してみました。

インクジェット印刷の比較

家庭用のインクジェットプリンターで、3種類の紙の印刷適性を比較しました。
結果からお伝えすると、3種類とも紙詰まりなどのトラブルもなく、スムーズに印刷することができました。それぞれの仕上がりを、詳しく見ていきましょう。

左から楮、三椏、雁皮の和紙に、同じウェブページをインクジェット印刷したものを3枚並べた写真。
左から楮紙、三椏紙、雁皮紙
こちらの弊社ウェブサイトページを印刷しました。
  • 楮(こうぞ)
    地色が白いため、比較的データに近い素直な色合いで印刷されます。インクが楮の繊維と馴染み、ナチュラルで柔らかな風合いに仕上がるのが魅力です。
  • 三椏(みつまた)
    こちらも非常に美しく仕上がります。三椏特有の、わずかに黄みがかった地色に印刷されるため、元のデータとは少し色合いが異なりますが、それがかえって温かみのある独特の「味わい」を生み出します。
  • 雁皮(がんぴ)
    3種類の中で最も鮮明で、シャープな仕上がりです。インクの発色も非常に良く、写真の細かなディテールまで見事に再現されました。紙の地色が白く、表面が極めて滑らかなため、元のデータが持つ情報を最も忠実に表現してくれます。
楮紙にインクジェット印刷された文字部分の接写。インクが繊維の質感と馴染んでいる様子がわかる。
楮紙
三椏和紙にインクジェット印刷された文字部分の接写。地色とインクが合わさり、独特の味わいが出ている。
三椏紙
雁皮紙にインクジェット印刷された文字部分の接写。滲みがなく、非常にシャープに印刷されている。
雁皮紙

インクの裏抜けについて

最後に、それぞれの紙の裏面も確認してみましょう。

インクジェット印刷した3種類の和紙(左から楮、三椏、雁皮)の裏面。どの紙もインクの裏抜けがないことがわかる。
左から楮紙、三椏紙、雁皮紙

和紙はコピー用紙に比べ、インクが染み込みやすい性質があるため、インクジェット印刷での裏抜けを心配される方も多いのではないでしょうか。しかし、今回の実験結果はご覧の通りです。一般的なコピー用紙と同程度の厚みを持つ楮と三椏はもちろん、それらより薄い(7割程度)雁皮でさえも、インクの裏抜けは全く見られませんでした。

【発想を広げるヒント】個性を活かす和紙選びの考え方

多くの方が素材を選ぶ時、まず「何に使うか」という用途から考え始めるのではないでしょうか。そこでこの章では、これまでの章で見えてきた各和紙の「個性」と、皆さんの「作りたいもののイメージ」をどう結びつけるか、その思考のヒントをお届けします。

「用途」からではなく「個性」から考える

まずお伝えしたいのは、和紙において一部例外を除き「この用途には、この紙」という絶対的な決まりはない、ということです。それは、和紙には様々な用途を受け止めるだけの懐の広さがあるからです。そこでまずご提案したいのが、この記事を読んでいただいている皆さんが、和紙を使って作ってみたいとお考えの商品や作品と、和紙の持つ特性・特徴を「マッチング」させるという考え方です。

イメージから考える、個性のマッチング例

とはいっても、最初は何から考えれば良いか迷われるかもしれません。そこで「発想の出発点」として、表現したいイメージと和紙の個性を結びつける、代表的な組み合わせを下の表でご紹介します。

表現したいイメージ個性がマッチする原料特徴
温かさ、力強さ楮(こうぞ)目に見える豊かな繊維の表情が、自然な温かみと頼もしさを感じさせます。染めてもその素朴な風合いは失われず、優しく染め上がります。
気品、知性三椏(みつまた)均一で滑らかな紙肌は、インクジェット印刷でもシャープな表現を可能にします。落ち着いた地色と上品な光沢が、作品全体を知的で気品あるものに引き立てます。
気高さ、特別感雁皮(がんぴ)繊維を感じさせないほど緻密で、絹のような光沢を放つ紙肌は、他にない圧倒的な存在感を持ちます。その、すっと肌に馴染むような手触りは、触れるたびに特別な感覚を味わえます。

もし、どうしても迷ってしまうという方は、まずはいずれかの和紙を一度手に取ってみてください。理想は3種類すべてをご体感いただくことですが、難しければ1種類でも構いません。なぜなら、和紙の個性はインターネットなどでの写真や文字といった「視覚情報」だけでは、完全にお伝えできないからです。指先で繊維の凹凸を感じ、手のひらで紙の温かみを確かめ、時にはその音に耳を澄ませる。そうした五感を総動員することで、皆さんが持っている感性と響き合う「直感的な発見」に繫がります。

和紙選びをもっと楽しむために

今回、私たちが国産原料100%の和紙にこだわったのには理由があります。ピュアな和紙は、その原料の個性が最も色濃く現れるからです。

そして、この記事を通じて、楮・三椏・雁皮それぞれが持つ個性を知っていただくことで、皆さんの今後の和紙選びの判断基準となる「ものさし」が手に入ると考えました。この「ものさし」があれば、市場で出会う様々な和紙の特性を、今までよりももっと深く知ることができると考えたからです。

例えば「楮60%、パルプ40%」と書かれた紙を見れば「ああ、これは楮の丈夫さと風合いを持ちつつ、価格を抑えた紙なのだな」と想像ができます。

もちろん、原料の産地や質、製造方法など他にも様々な要因が絡み合うため、これだけで全てが分かるわけではありません。あくまで1つの指針です。しかし、この基本的な「ものさし」を持つことで、和紙選びはもっと深く、楽しいものになるはずです。

最後に

なぜ、私たちがこの記事を書こうと思ったのか。最後に少しだけ、その想いをお話しします。

多くの方が「楮、三椏、雁皮という名前は知っていても、その違いがよく分からない」と感じていらっしゃることを、私たちも日頃から肌で感じていました。そして、その答えを探そうにも、ネット上には断片的な情報しかなく、並べて比較できる場がほとんどありませんでした。

その結果「とりあえず和紙と書かれたもの」を、なんとなく手に取ってしまう…そんな状況にあるのではないかと思ったのです。「知った上で選ばない」のと「知らないから選ばない」のとでは、その意味が全く異なります。この状況を少しでも変えるお手伝いができれば、和紙選びの視野が広がり、選ぶことが楽しくなる方が増えるのではないか。そんな想いから、この記事を書きました。

この記事が、皆さんの和紙選びの「なんとなく」を「だから私は、この和紙を選ぶ」という「確信」に変える最初のきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

私たち自身も今回、改めてそれぞれの和紙の個性と向き合うことができました。
長い文章となりましたが、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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