先日ショールームにお越し頂いたお客様から「和紙って食べられるのですか?」とご質問を頂きました。
同じように疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言うと、人間は和紙(紙)を消化する事が出来ないので、大量に食べると腹痛や便秘などお腹の調子が悪くなります。漫画のネタで「辞書を食べて内容を記憶する」というものもありますが、辞書で用いられている洋紙には、原料以外に薬品や填料・顔料が使われており、覚えられないどころか体にとても悪いので実践しないでくださいね。ただし和紙に限っては例外があり、条件さえ満たせば人間の体に良い効果をもたらします。こちらに関しては本記事の後半でご紹介いたします。
和紙(紙)を消化できる生き物

和紙や洋紙の主成分は、セルロースという水にも熱にも強い成分で出来ています。
人間には消化出来ませんが、有名な童話『やぎさんゆうびん』の歌詞の中で「白やぎさんからお手紙着いた、黒やぎさんたら読まずに食べた」と言う歌詞の影響もあってか、ヤギは紙を食べるというイメージがありますよね。その童話の通り、ヤギは本当に紙を食べる事が出来ます。
意外な消化の仕組み
実は、ヤギ自身はセルロースを消化することができません。お腹の中にセルロースを分解する菌がいて、その菌の力を借りて栄養源として利用しているのです。この能力はヤギだけでなく、牛や鹿、馬、羊、キリン、ラクダなどの草食動物や、白アリやゴキブリなどの昆虫にも見られます。これらの生き物は、植物が豊富な環境に適応する過程で、セルロースを栄養源として利用できる能力を獲得したと考えられています。
条件さえ揃えば人間でも食べられる!?

用途によって厚みは様々なものがある。
健康のために毎日の食事に積極的に取り入れたい栄養素「食物繊維」。実は紙の主成分であるセルロースは、不溶性食物繊維と呼ばれる食物繊維の一種なのです。微粉末にしたセルロースは、その消化されない効果を最大限に生かして、健康食品やサプリメントの主原料としても使われています。
和紙で作った餅?江戸時代の知られざる食文化
江戸時代中期に刊行された「料理珍味集」という書物には、紙餅(目くり餅)という食べ物について書かれています。その名の通り和紙の餅で、不作や飢饉の時にも食べられる救荒食品として考え出されました。使い古した奉書紙と、くず粉、味噌が材料として使われており、味噌汁などに入れて煮込んで食べられていたそうです。「料理珍味集」の中には「これを食する者、年中病気を除くなり」とも書かれており、整腸剤のない時代に腸内環境を整えて免疫力を高める方法を体感していたことがうかがえます。薬品を使わない和紙が作られていた頃だから出来る食べ物ですね。
ただ現代では洋紙だけでなく、和紙にも量産や製造コストを下げるために様々な化学薬品が使われているものがほとんどです。くれぐれも食べないように、動物にも与えないようにしてください。
- 奉書紙(ほうしょし)とは:古くから公文書などに使われてきた高級な和紙のこと。高位者が下位者に下す「重要事項を伝える文書」のことを「奉書」と呼んでいて、それに用いられていたことから「奉書紙」と名付けられたようです。かつては楮(こうぞ)を使用し手漉きで作っていましたが、現在ではパルプを使用した機械漉きのものがほとんどになりました。今でも「大切なことを伝えるときに使う紙」として奉書紙が使われています。祝辞や弔辞だけでなく、日本画の裏打ちや版画、結納包み、掛け紙、のし紙、懐紙、免状用紙など、その用途は多岐にわたります。
現在、和紙の原料である楮(こうぞ)の外皮・葉を使ったお菓子やお茶などを作られている方のほか、紙餅を再現した方もいらっしゃるようです。どんな味や食感なのか気になりますね。
最後に
和紙を食べると聞くとビックリしますが、私たちが普段食べているものにもセルロースを多く含んだものがあります。例えばサツマイモやゴボウなどの野菜、エノキや干しシイタケなどのキノコ類、大豆やおからなどの豆類です。では、なぜこれらのものは食べられるのに、和紙は食べられないと思われているのでしょうか。私の予想ですが、それ自体が「料理に合う味や風味を有しているか」「調理のしやすさ」などが影響していると考えています。もしかすると今後、食用和紙として新たな和紙の可能性が見出されるかもしれませんね。
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