お札をポケットに入れたまま洗濯してしまった事、一度くらいは経験された事があるのではないでしょうか。
その時に日本の紙幣は全く問題なかったと思います。しかし、海外の紙幣で同じことをするとボロボロになって後始末が大変なことになります。
同じ紙のように見えるのに、なぜ違いが出るのでしょうか。その理由を国産と海外産の原料の違い等にも触れながら、分かりやすく解説していきます。
国産と海外産の三椏原料の違い
下記写真は、和紙の3大原料の一つ三椏(みつまた)の木です。中国と日本の三椏の比較写真なのですが、育てている環境は同じでも全体的の雰囲気や葉っぱの大きさなど結構違いますね。
中国の三椏(中国から輸入して植えているもの)
葉っぱは大きく、幹も太く力強い。
日本の三椏。
葉っぱは細めで幹はほっそりとした感じ。
原料(白皮時)の違い
天日乾燥している白皮(和紙の原料)を観察してみると、大きな違いがありました。
- 白皮とは:和紙の原料となる植物の外皮の黒皮と、その下にある緑色のあま皮を取り除いたもの。
中国三椏は分厚くゴワゴワしていて、日本の三椏は薄い感じです。
実はこの三椏、元をたどると同じ見た目のものだったのです。
和紙にした時のそれぞれの違い
もともと中国からきた三椏
実は三椏はもともと日本に古くからあるものではなく、江戸時代の後半から明治初め頃に中国から渡ってきたと言われています。元々は同じ種類(見た目も)の三椏でしたが、気候風土の違いから長い年月をかけてここまで違うものに変化していったようです。それにしても全く異なる見た目ですよね。育てる地質によっても少しずつ変わってくるそうです。
- 中国三椏:繊維が太く長い、カサカサして脂気がない。紙にするとふんわりとした感じの和紙になる。
- 日本三椏:繊維が細くコシがあり光沢のある和紙になる。木の年数が経つにつれて脂気が少なくなりカサカサした和紙になりやすい。
っと文章で見てもちょっと分かり難いですよね。
これは余程和紙に精通している方か、目の前に中国三椏と日本三椏それぞれで漉いた和紙を並べて触ってみて初めて分かる違いです。ここにおいては中国三椏だからダメ、国産だから良いという訳ではなく、それぞれの用途にあった使い方があるという事です。原料も勿論大切ですが、何より原料をどう処理をして和紙を漉いたのか。その製造工程が上質の和紙を作る上で最も重要といえます。
日本のお札が洗濯しても破れない理由
日本のお札は世界の中でも耐久性が高いとされています。
その理由として和紙の技術や原料の一部に「三椏(みつまた)」や「マニラ麻」が使われているからです。そうです、最初にお話した日本の紙幣は洗濯してもボロボロにならない理由がこれです。しかし近年では国内の三椏では生産量が少なくまかなえないので、中国産の三椏を入れている為、昔のお札と比べると手触りや光沢感が違う事が分かります。
- マニラ麻とは:和紙原料の一つ。バショウ科の植物で、ロープや紅茶のティーバッグの原料などにも使われています。
一方海外の紙幣は亜麻や綿、または木材パルプのみを原料としているため手触りは固めです。海外の紙幣も時代に合わせて変化しており、一部の国ではプラスチック(ポリマー)紙幣を使用している国もあります。プラスチック紙幣は汚れに強く、耐久性に優れており、偽造もし難いといったメリットもあるようです。
元々、中国から伝わった和紙は日本の文化や伝統によって熟成され、独自の進化を遂げました。
その技術が紙幣をはじめとした身近な所に使われています。生活の中のどこに日本の和紙の技術が活かされているか、調べてみるのも面白いですよ。
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コメント
コメント一覧 (2件)
和紙はロマンチックな感じがします。うちも三椏を此れから少し出荷したいです。頑張ります。大変勉強に成りました。
>>1
保田さま、嬉しいコメントありがとうございます(^-^)
植物もその土地に適応していくところに生命力を感じますね。
ある意味では産地に拘りすぎず、用途やニーズに合わせた和紙が、もっとも良い和紙なのかもしれません。