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石川県金沢市にある和紙専門店「紙あさくら」の公式ブログです。暮らしを彩る様々な和紙インテリアや制作事例などを発信しています。

表具のプロに聞いた!和紙を壁紙に使う際の糊のおはなし

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先日、和紙の内装施工でお世話になっている表具師の武田さんとお話する機会があり、昔から気になっていた事を聞いてみました。それは、和紙を壁紙として貼る場合「ビニールクロス用の糊(クロス糊)」と「昔ながらの煮糊(でんぷん糊)」ではどのような違いがあるのかという疑問です。

以前から、クロス糊は和紙と相性が良くないと何度も耳にしてきました。
具体的にどのような問題があるのでしょうか。

目次

貼り方にも違いがある

通常、新築住宅やリフォームで和紙の壁紙を依頼した場合、指定しないかぎりビニールクロス壁紙と同じ糊を使って、和紙をベタ貼りされることが多いようです。機械で一気に糊を塗れますし、工期も非常に早く、あっという間に仕上がります。

一方で、和紙の扱いに慣れている経師屋(表具屋)さんが貼る場合は、予算にもよりますが下地には「浮け貼り」をしてから「表貼り」を行います。浮け貼りとは、和紙の周囲にだけ糊をつけて中央部には糊を付けない貼り方。表貼りには4辺を濃い糊で、中心部分はぎりぎり貼りつく程度の薄い糊でベタ貼りします。この方法により、美しい仕上がりとなるだけでなく、下地と和紙の間に空気層が形成され、和紙本来の調湿性を最大限に活かすことができます。完成した和紙壁は、乾燥時にはピンと張り、湿度の高い時にはふんわりとした質感になります。

  • 経師屋(表具屋)とは?:表装、襖や障子の張込み・張替などを行う職人さんのこと
フチに濃い糊を塗っています(和紙壁紙)
表貼り用の和紙/フチ部分に濃い糊を塗っているところ
内側には水のような薄い薄い糊を塗っていきます(和紙壁紙)
表貼り用の和紙/中心部分に薄い糊を塗っているところ
2種類の糊を使用しています(和紙壁紙)
表具師の武田さんが昔から使う「でんぷん糊」
貼っている途中(和紙壁紙)
手際のよいプロの仕事

白い和紙が浮け貼り(袋貼り)、茶色い和紙が表貼りです。表貼りを下から順に貼っていく事で、継ぎ目にホコリがたまらない様になります。

漆の和紙(和紙壁紙)
施工場所はテレビボードの壁面
下貼り、上貼り共に袋貼り(和紙壁紙)
表貼りを下から順に貼っていきます

糊は用途に合わせて濃度を調節

現代の壁紙などは、強力な糊を使ってしっかりと貼るイメージですが、伝統的な表具技法では、数十年・数百年後の修復を想定した糊選びをしています。日本の表具ではその昔、糊を入れたかめを10年ほど床下に管理しながら保存し、自然に腐敗させることで接着力を弱めた「古糊」を使うこともありました。

適度に接着力が弱い古糊は、後々の修復作業の際に裏打ち紙をきれいに剥がすことができ、作品等の負担を軽減し、後世に残せるように考えられています。現在では扱いやすい糊も出回っているので、用途に合わせて適切な糊や濃度を選択することで、満足できる仕上がりに近づけることができます。

糊によって出てくるシミや黄ばみについて

和紙壁紙とクロス糊

表具師の武田さんによると「和紙をクロス糊で貼った場合、和紙に染み込んだ糊剤が経年劣化により、シミや黄ばみとなって表面に現れる可能性がある」とのこと。発生時期は5年先なのか10年先なのかは状況によりけりですが、必ずとは言えないもののリスクは存在するとお話されていました。

また、和紙壁紙によっては、クロス糊で施工直後に和紙表面の色ムラ感が出てしまうものもあります。和紙壁紙には、メーカーごとに推奨する糊剤が指定されている場合もありますので、事前に確認する必要があります。メーカー指定がある場合には指定の糊を。指定がない場合には「でんぷん糊」の使用が望ましいです。

ビニールクロスとクロス糊

ビニールクロスは水分を通さないため、糊が表面に浮き出る心配はありません。しかし、施工時にクロス表面に付着した糊を拭き取らず放置すると、数年後に黄ばみとなって現れることがあります。そのため、施工者の技量が仕上がりに大きく影響します。

クロス用の糊による出たシミ(ビニール壁紙)
黄ばみの参考写真。クロス糊が付いたまま放置するとこの様な茶色いシミが出てくる事があります。

一方で、表具師の武田さんが昔から使うでんぷん糊は、シミや黄ばみが起きないようなものを使用しているため、その心配がないのだとか。私の実家も1995年頃、武田さんに壁紙を貼ってもらいましたが、20年以上経った今でも黄ばみやシミは一切ありません。

桂離宮をモチーフにした襖(楽紙庵)
20年以上たった今も美しい状態の「楽紙庵」

費用面では、糊よりも工賃や使用する和紙の方が大きなウェイトを占めます。こだわった和紙壁紙を最大限に活かし、長く楽しむためにも、糊選びまでこだわりたいものです。これから和紙壁紙を検討されている方は、糊についてもぜひ吟味してみてください。

※弊社ではこちらの「でんぷん糊」を使用しています。
経師屋さんが使う本格的な糊ではありませんが、和紙との相性がとても良く、シミが発生したことがないため、壁紙や障子、パネル加工など、和紙全般に長年愛用しています。ホルムアルデヒドなどの化学物質発生ゼロで、DIYなどにも安心して使用できます。

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