和紙と洋紙の違いを深掘りする本シリーズ、第3回(最終回)です。
これまで「第1回 日常にある和紙について」「第2回 和紙ってどんなもの?」について解説してきました。
今回のテーマは「見分け方」です。和紙と洋紙、どう見分けるのか?具体的な方法を解説していきます。
和紙と洋紙の見分け方
これまでのお話では、和紙の原料として楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の3種類があることをご紹介しました。それぞれ、洋紙にはない独特の風合いを持っています。
今回は、最も一般的な楮を使った和紙を例に、普段和紙に触れる機会が少ない方でも、和紙と洋紙の違いがわかる4つのポイントをご紹介します。
【注意点】
- 市販されている和紙は、原料の配合や製法によって様々な種類があります。そのため、すべての和紙が以下の特徴を持つわけではありません。
- ここでは、楮100%の和紙と、一般的な洋紙を比較しています。
破いて繊維を見る/一番オススメの方法
和紙の繊維
和紙を破いてみると、下記写真のように繊維質が沢山確認できます。
この1本1本の長い繊維が絡み合うことで、薄くても丈夫な和紙に仕上がるのです。
洋紙の繊維
洋紙の方は繊維が短いので、和紙と同じ厚さのものでも簡単に破れてしまいます。 そして破いたフチをみると、下記写真のようにほとんど繊維が見られません。
和紙と洋紙を判断する方法として、破いてみる事が最も分かりやすい方法です。でも、お店の商品を破って確認することが難しいので、それが問題ですね。手軽に出来る実験として、ご自宅にあるティッシュペーパーを破ってみてください。和紙の繊維と比べて、非常に短い繊維からできていることが分かるはずです。
手触りの違い
触って判断するには、本物の和紙を触り続けていないと、なかなか分かりづらいかもしれません。しかし、楮の靭皮繊維は、他の和紙原料の中で最も繊維が長く、木材繊維から作られた洋紙と比べると、その違いは歴然としています。和紙の大まかな質を判断する際にも行う方法で、手から得られる情報は非常に多いのです。
和紙の場合
楮和紙は、太く強靭な繊維が幾重にも重なりあっているため、手触りは洋紙に比べて、“ざらざら”していています。また、擦っているうちに、長い靭皮繊維が表面に現れてくるのが特徴です。
洋紙の場合
洋紙は、木を細かく砕いた短い繊維で作られているため、表面は基本的にツルツルしています。一部の洋紙にはザラついたものもありますが、擦っても和紙のように長い繊維は出てきません。出てくるとすれば、短く細い繊維です。
長い繊維でできている和紙と、短い繊維でできている洋紙。繊維の構成が大きく異なるため、破いて繊維の出方を見るとその違いがはっきりと分かります。
透け感
透け感のある和紙は、光を透かせる事で和紙独特の繊維質が見えます。
楮は繊維が長いので、慣れてくるとこの方法も判断の一つとして使えます。
その他、きれいな和紙に仕上がっているか出来栄えを見たりする時などにも、光に透かしてみることがあります。和紙漉き職人さんの前でこれをすると「むむ、この人は和紙を分かっているなぁ~」っと思われます(笑)
和紙特有の匂い
漉きたての和紙は特に分かりやすいのですが、和紙独特の原料の香りがします。
漂白されて作られた和紙だと不思議と香りがほとんどありませんが、昔ながらの製法で漉かれた和紙からは、独特の香りが強く漂います。ただし、この香りは、時間の経過とともに薄れていくため、徐々に嗅ぎ分けることが難しくなっていきます。
番外編
余談ですが、以前、漉き手の職人さんの工房を訪ねた際、職人さんが和紙を舌で舐める場面に出くわしました。不思議な光景に、思わず「それで何か分かるんですか!?」と聞いてみると「和紙のpH値を大まかにチェックしている」と教えてくれました。pH値を確認することで、和紙の品質や状態を判断する手がかりになるそうです。職人さんの感覚には驚かされますね!
和紙の見分け方、上手くお伝えできましたでしょうか。
楮の原料は元々育ちやすく生産量も多い為、一般的な和紙は楮で作られたものがほとんどです。最初は見分けが難しいかもしれませんが、気にして見るようにしていくと、不思議と徐々に違いが分かるようになるはずです。
和紙でご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
ご覧いただき、ありがとうございました。
【和紙と洋紙の違い解説シリーズ 全3回】
第1回「日常にある紙」編
第2回「和紙ってどんなもの?」編
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